「追跡 税金のゆくえ ブラックボックスを暴く」高橋祐貴」
過去最高の税収と税負担率を更新し続けている一方、歳出は適切なのか。
社団法人を介した中抜き、不可解な単価費目多数のオリンピック予算、特別会計となる巨額の基金などに対し、筆者が独自の取材を基に実態に踏み込んでいる。
オリンピックや持続化給付金などの官公庁が委託する事業について、委託を繰り返す「中抜き」が問題視されているがなくならないのは何故なのだろうか、また官公庁からの一時受注者を一般社団法人にすることが中抜きスキームの肝のようなのだが何故一般社団法人を一時受注者にしているのだろうか、という問題提起がされているが、ほとんど解明できておらず、かなりの肩すかしを食らった。関係者などの粘り強く取材をおこなったアピールが強いが、取材の中身はない。
他方、コロナ禍で赤字病院が黒字化した、補助金を多額に受け取る「幽霊スキーム」はの解明はよくできていた。またコロナワクチンの「打ちたくない人たちが打ちたい人のために税金を負担するのってどうかと思います」という自治体職員のコメントは心に残った。
日本全国にある「消防団員」への報酬の不明瞭な支給・配分については、初めて知ったもので勉強になったが、毎年どのくらいの歳出があるのかは記載がなく、レベル感がよくわからなかった。
防衛費については、個別の戦闘機などの取得費用やメンテナンスコストなど具体例が用いられ、メンテナンスコストなどが上振れ要因となること、コントロールが難しい背景など、なぜ?と思うことが深堀されていて、知見が深まった。また直近5年間で2倍になった防衛費を敵対視していたが、国防の観点と武器費用のコントロールの難しさに、闇というよりも根深い国としての課題を感じた(闇もあるのかもしれないが)。
最終章で、基金についてついて触れているが、あまり深く踏み込んだものではなかった。
テーマによってだいぶ濃淡があった。
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